美学・哲学・悪魔学・詩集


by novalis666
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形而上学的〈風〉についての考察 -XI 風の種子


XI 風の種子




 風は風媒し、花粉/差異を運搬する(種差=運搬 diaphora)。

 〈花粉 Biütenstanb〉とはノヴァーリスにおいて、霊感を帯び炸裂した天才の思考の断片=断章を意味している。NOVALISとは、〈種蒔く人〉を意味する、フリードリヒ・フォン・ハルデンベルクの筆名である。

  *  *  *

 〈友よ、大地は貧しい。ほんのわずかな収穫を得んがためにも、われわれはたくさん種子を蒔かねばならぬ。/[銘]〉

 〈接触のたびごとにひとつの実体がうまれ、接触がつづくかぎりその作用もつづく。これが、個体のあらゆる綜合的変化の基礎である。もっとも、一方的な接触と相互的接触がある。前者が後者の基礎になっている。/[89]〉
(前田敬作訳 現代思潮社古典文庫『日記・花粉』「花粉」)


  *  *  *

 ノヴァーリスは〈接触〉という語で、ドゥルーズ&スピノザが〈触発=様態変様〉(affectio)として語ったことと同じことを言おうとしている。
 純粋な出来事としての風は、差異の種子である花粉=火種を運搬する。それはどこからともなく漂い寄せる、〈実体〉から切り離された差異の分子である。

 差異は風のなかで漂泊=彷徨し、その接触によって個体を触発して綜合的に変化させる。それが〈実体〉の生成である。いわばそれは触発する差異であるといえる。しかし、この差異は根本的には破壊的で炸裂的なものである。それは個体の実体的同一性を深刻な危機に晒す。

 花粉は異性的で生殖的である。それは同一体に取り込まれ、孕まれるときに〈同〉のなかの〈他〉として〈実体〉へと結実する。或いは、取り込むものが基体=基盤としての質料であるとすれば、ここで差異は形相として働き、個別的具体的な〈実体〉を誕生させるといってよい。
 しかし、この場合、自己実現するものは〈同〉ではなく〈他〉であり、差異であり、形相である。
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by novalis666 | 2005-02-01 05:47 | 考察